前回、五行説に基づいた肝臓などに良い食べ物の話をしましたが、多少問題があるといって終わりました。その続きです。

多少問題があるというのは次のようなことからです。青リンゴは青いのですから、肝臓に良い食べ物になります。赤くなったリンゴは赤いのですから心臓に良い食べ物になります。青紫蘇は青いので肝臓に良い食べ物、赤紫蘇は赤いので心臓に良い食べ物となります。なんか変です。リンゴの赤いのはアントシアニンという物質のためで、青リンゴはアントシアニンを持たないため、赤くならず青いのです。つまりアントシアニンのあるなしが青と赤の違いになります。アントシアニンがないと肝臓に良い食べ物で、アントシアニンがあると心臓に良い食べ物ということになってしまいます。これでは色の違いで臓器にあわせた食べ物の話は信用できなくなってしまいます。

さらに、このブログの3-4回前に書いたキハダですが、黄色です。すると脾臓(胃)に良いものとなります。しかし、口にしてみればわかりますが、非常に苦いもので、胃を養うものとは思えません。実際、胃腸が弱っているときにこれを飲むと、かえって悪くなります。短期的に使用して胃の調子を整える薬です。キハダは熱を取る作用が強い生薬です。わかりやすくいうと、炎症を抑える生薬です。例えば、胃炎の時、胃の炎症を抑えて胃を正常化する薬です。正常化した状態でさらにキハダをとると、熱を取る作用のため、胃が冷えてしまいます。続けて飲むと調子が良いという人は胃などに熱がある人で、普通は胃の調子が整ったら飲むのをやめる方が無難です。

では、五行説はあてにならないのかというと、そんなことはありません。実は五行説には、青や赤、黄、白、黒の五色だけではなく、五味(酸っぱい=肝、苦い=心、甘い=脾、辛い=肺、塩からい=腎)というのもあります。つまり、食べ物などの五行は色だけではなく、味など他の五行も考慮して総合的に決まります。先に色だけで食べ物の五行を決めたのは無理があるのです。最初の青紫蘇、赤紫蘇は、味が「辛い」などの理由により肺に良い生薬になります。色による五行は重視されないようです。

昔の偉い先生が、腎が弱っている人に「黒い色をした物を食べるといいですよ」というのは時々聞いたことがあるのですが、他の色をした食べ物については聞いたことがありませんでした。なぜか考えてみると、黒い色をした食べ物は腎に良いというものがほとんどで、例外はあまりないのです(と思っています)。その他の色の食べ物は臓器と色が合わない場合が結構あり、患者さんに勧めにくいので偉い先生は黒い物以外は言わなかったのではないかと思っています。

書いておきながらこういうのもなんですが、黒い食べ物以外は、こんなものがあるのだという程度に思っておいてください。

田中医院