トリカブト
先日、トリカブトを誤って食した人が亡くなった、と報道がありましたが、トリカブトの誤食による事故はしばしばあります。猛毒で有名なトリカブトをなぜ食べてしまうかというと、山菜取りをして、食べられるものと間違えてしまうからなのです。間違えられる山菜として、ニリンソウ、モミジガサ、ヨモギ、ゲンノショウコなどがあります。これらは成長したものであれば、トリカブトと間違うことはほとんどないのですが、山菜取りをする若葉のうちは、トリカブトの若葉と区別がつきにくく、誤って採取してしまい、事故が起きてしまうのです。
トリカブトは北半球の温帯から寒帯に分布し、根、茎、葉、花と全草に毒があります。特に根に毒が多く、北半球の民族の間では有名な毒草で、矢毒としてもしばしば使われ、日本ではアイヌでもクマなどを倒す矢毒として使われていました。花にも毒があるため、養蜂家は蜂たちがトリカブトの花の蜜を取らないように、場所や時期に注意するそうです。怖いトリカブトですが、困ったことに解毒剤はなく、しかも青酸カリなどよりも強力な毒です。また、この毒は熱にかなり強く、普通に煮たりゆでたりした程度では毒性は落ちません。山菜を食べるのに、十分加熱すれば、トリカブトと間違えて食べても大丈夫というのは間違いで、少しぐらいゆでても毒性はほとんど落ちないので、注意が必要です。
ご存じの方も多いと思いますが、この猛毒のトリカブトを漢方では薬として使っています。当然毒を減じて、ほぼ無毒の状態で使い、附子(ぶし)、烏頭(うず)、天雄(てんゆう)と言われる生薬です。この毒を減じるのに、いくつか方法があります。塩水に漬けたり、灰をまぶしたり、熱をかけたりして毒を減じるのです。熱をかける場合は、圧力釜で100℃以上の熱を長時間かけて、毒性を落としています。短時間では減毒しないのです。
附子の効能は、新陳代謝を高めたり、鎮痛、強心作用などがありますが、このようなトリカブトを昔の人はどうして薬として使おうと思ったか不思議でしょうがありません。毒性は強いですし、毒以外に使い道があるかどうかもわからないものです。一番不思議に思うのは、いろいろな処置をして毒が弱まったかどうかどうやって調べたのでしょうか。動物に食べさせる以外方法は思い浮かびませんが、昔は実験動物を飼っているわけでもないですから、試すのにたくさんの動物をどうしたのか、また動物だって毒に敏感ですから簡単には食べないと思うし、本当に不思議です。古代人の知恵には驚かされます。
念のため追記しておきますが、漢方薬エキス製剤の附子で毒のトラブルが起きることはありませんのでご安心を。










