この時期になると、咳が止まらないという人が、しばしばいらっしゃいます。その原因にはいろいろありますが、多いのが花粉によるものです。熱もなく割合元気なのに咳だけがひどい、というようなのは、たいがい花粉のためです。特に咽喉を痛めるような風邪をひくと、こうなりやすいです。なぜかというと、風邪をひいて咽喉を痛めると、炎症のため咽喉が過敏となります。しかも咽喉の粘膜が傷つき、そこに花粉が入り込むと、咽喉でアレルギー反応が起きるので、咽喉がムズムズし、せきが起きるのだと思います。咽喉の粘膜は、重層扁平上皮というものでできていますが、これは細胞が積み重なってできており、要するに丈夫なのです。したがって、本来は花粉が来ても跳ね返すことができるので、普通は花粉が咽喉に飛んできても、何の反応も起きません。しかし風邪などひいて粘膜を痛めると、先ほど述べたような理由で花粉と反応してしまい、アレルギー反応が咽喉で起きてしまうのです。すると咳の刺激で咽喉の炎症がさらに悪化します。さらに咽喉は花粉に反応しやすくなり、咳が出て・・・・と悪循環に陥ります。咽喉が弱い人では、花粉の時期に風邪をひかなくても、同じような理由で咳が止まらなくなることもあります。

こうなってしまうと、簡単には治りません。花粉のない時期であれば、咽喉の炎症を抑えてやれば、咳は落ち着くので比較的治しやすいのですが、花粉が飛んでいるとこうはいきません。咽喉の炎症を抑えても、花粉が次から次へとくるので、炎症が抑えきれないのです。

漢方の専門家の私ですが、この治療はたいてい、漢方薬だけではなく、西洋薬も併用して治します。というのも、エキス顆粒の漢方薬では非力で、かなり強力に咽喉の炎症と咳を抑えてやらないとよくならないのです。どうしても漢方薬だけでという人には、煎じ薬を使いますが(保険は効かないので高いです)。

花粉症の人は風邪をひかないように気を付けましょう。

蛇足になりますが、この話、以前似たようなことを書いたことがあります。再び書くのもどうかなと思ったのですが、咳が止まらないという人がやたらと多いのと、また古いブログはあまり読む人もいないと思うので、また書きました。

田中医院