皮膚は内臓の鏡である
先日、ニキビが現代医学治療でうまく治らないので、漢方治療を希望されてきた患者さんを診察しました。その時、いつものことですが「胃腸の調子はどうですか」と尋ねました。すると「ニキビで胃腸のことを聞かれたのは初めてです」といわれ、少し驚きましたが、やはりと思いました。私が学生の時、皮膚科の講義で「皮膚は内臓の鏡である」と習ったのを覚えています。それですので、皮膚のことばかりではなく、ニキビの患者に胃腸の調子くらい聞けばよいのに、いや聞かなくてはおかしいのではと思うのですが、そういう先生はあまりいないようです。現代医学では、ニキビは毛のうに皮脂がつまり、そこでばい菌が増えニキビを起こす、ということを中心に教えられるので、皮膚にしか目が行きにくいのです。せっかく「皮膚は内臓の鏡である」ということを学んでいても、胃腸が悪いことがニキビを悪化させるとは習っていないので「胃腸は内科で見てもらってください」ということになってしまいます。もっとも、現代医学の胃腸の治療をしても、ニキビはなぜか。あまり改善しないことが多いですが。
その点、漢方は全体を見て局所を見るのでこうはなりません。現代医学の皮膚科で「皮膚は内臓の鏡である」というのと同じように「病の應は大表に表わる」という言葉があります。これは「病気の変化は皮膚に現れる」というような意味です。この場合、内臓の異常が皮膚に出ている、というような意味なので、皮膚ではなく、内臓が悪くなっているので、内臓を治せば、皮膚もよくなるということで、「皮膚は内臓の鏡である」というのとは多少意味が違ってはいます。
実際に胃腸系が悪くなっている場合、胃腸を狙った漢方薬だけでしばしばニキビは改善します。印象的な症例があります。患者さんは、口の周りのニキビで困っていましたが、現代医学ではあまり改善しなかったので漢方治療を求めてきた方でした。診察すると、みぞおちにつかえがあるなどがあるので、胃腸によく使う半夏瀉心湯を処方しました。ニキビは結構ひどかったのですが、驚くほどニキビに効果がありました2か月ほどでニキビはほぼなくなり、きれいな肌になりました。実はこの方、他でもニキビにしばしば使われるような漢方薬でも治療してもらったことがあるのですが、良くなりませんでした。皮膚だけでではなく、全体を診て治療するのが漢方です。
読み返してみると、胃腸の薬でニキビが治るというような誤解を受ける文章になっていますが、必ずしもそんなことはありません。全体を診て歪んでいるところを治すので、胃腸に限りません。ホルモン関係の処方もしばしば使います。誤解なきよう。