医者をやっていて一番うれしいのは、患者さんが治ってくれることですが、他の医療機関で治らない患者さんを治した場合は、なおいっそうです。先日コロナに感染して、後遺症に困った人を診察しました。現代医学での治療でうまくいかなくて、漢方でたちまち治った例です。

個人情報もあるのであまり詳しく書きませんが、30代の方です。3週間ほど前にコロナに感染し、ほどなく治ったのですが、のどや鼻が痛い、咳、関節痛、だるさなどの症状が残りました。ロキソニンなどの解熱鎮痛剤を飲むと落ち着くのですが、薬が切れると同じ症状が出てしまい、うまく治りません。そこで漢方治療を求めて当院に来院されました。診察すると、上記症状のほかに、食欲不振、食後に気持ち悪くなる、尿量少ない、いつもより身体が冷えるなどの症状がありました。そこで半夏瀉心湯に朝鮮人参を加えた漢方薬を処方しました。1週間後に来院されたのですが、薬を飲んだ日から一日中といっていいほど寝てばかりいたそうです。数日したら、寝る時間は減り、通常に戻ってきました。それと同時に後遺症がかなり軽減してきました。食欲も出てきて、胃の調子も改善しました。半夏瀉心湯という薬に通常眠くなる作用はありません。にもかかわらず眠くなるときというのは、間違いなく薬が効いているときなのです。この眠くなったのは、私の嫌いな言葉、「好転反応」といってもよいものだと思います。この方の場合もほぼ一日中といっていいほど眠くなり寝てしまいましたが、眠くなくなるとともにコロナ後遺症の症状が改善したのです。

対症療法として解熱鎮痛剤を投与する現代医学的治療に対して、身体全体のバランスを考えて治療する漢方薬との差がはっきりと現れたものと思います。現代医学も漢方をまねて、現代医学の薬で胃腸の治療をしても(半夏瀉心湯は胃腸系にしばしば使われる薬です)、眠くもならないだろうし、全体の改善もまず無いと思います。ここが漢方薬の効果の不思議なところであり、すごいところでもあると思っています。

こういう症例を書くと、コロナ感染症の後遺症に半夏瀉心湯が効くという誤解を招くのが心配です。漢方薬は患者さんの状態に合わせてそれぞれ処方される薬なので、半夏瀉心湯がコロナの後遺症に必ずしも効くわけではない、漢方でいう「証」が適していなければ効く可能性は低いということを付け加えておきます。

田中医院