漢方薬と西洋薬(3)
暑い日が続いています。夏休み中に息子夫婦が我が家に泊まりに来ました。子供が1人いるのですが、この暑い夏と、いたずら坊主のため両親ともに疲れきっているようです。そこで、元気を出してやろうと思い、夫婦2人に補中益気湯を煎じて飲ませてやりました。すると元気になるどころか、2人とも強い眠気に襲われ、寝てしまいました。補中益気湯が元気になるどころか眠気を誘ってしまうというのはしばしば経験していることなので、驚きもしませんでしたが、いたずら坊主の相手をこちらがしなくてはならなくなってしまうのにはまいりました。
くだらない話を書きましたが、漢方薬の作用は本当に不思議です。元気を出す薬である補中益気湯を飲んで、元気が出るのではなく、逆に眠ってしまうのですから。現代薬では、副作用を別にして、このようなことは考えられないことです。例えば尿が出なくてむくんでいる人に利尿剤を処方すれば、尿が出てむくみは改善します。ところが利尿薬を処方して逆に尿が出なくなってしまうことが起きたら、薬として使えません。こんなことは起きないので(副作用は除く)、安心して処方できるのが現代薬です。この考えで行くと、漢方薬はとんでもない薬です。ただ漢方薬が予想される作用と逆の作用が起きても最終的には患者に不利益になることはなく、かえって良くなるのが普通です。息子夫婦の場合も、寝た後は体がすっきりして元気になったと喜ばれました。
漢方薬は患者に都合の良い方向に働きますが、この不思議な作用をどう考えるかというと、以前も書きましたが、相反する作用が起きるのは、相反する作用を持つ物質が漢方薬の中に存在しているからではないかと思っています。そして漢方薬が作用する部位が、現代薬とは違うためにこういうことが起きると考えています。どういうことかというと、例えば自動車を速く走らせたいとき、エンジンやギヤ、タイヤなど車のハードの部分を直すことで速く走らせようとするのが現代薬で、自動車ではなく、運転手、ソフトの調子を整えて速く走らせるのが漢方薬ということです。薬の作用する部位が全く違っているのです。こう考えると、元気になる薬で眠くなるというのも、部品の部分ではなく、制御する中枢部分に働いていることを考えれば、説明しやすいのです。漢方薬の作用が現代薬に比べると、はるかに作用が弱いのにかかわらず強い効果がみられるのは、作用している部分の違いによるためと考えられます。車が走っているのを止めるのに車自体を抑えて止めるにはすごい力がいりますが、運転手、コントロール部分に作用すれば弱い力で済むということです。
ただ漢方薬が具体的にはどこに作用するのかといわれても、残念なことに現代の医学ではまだ解明できていないのが、この話の欠陥です。