先日、漢方薬を処方した患者さんから、「薬を飲むと排尿の回数が増え、トイレに行くのが忙しくなり、困りました。」といわれてしまいました。この場合、尿量が増えるのはよい反応で、身体にたまっている「水」が漢方薬によって排出され、薬はよく効いているのです。飲み始めは頻尿で困るかもしれませんが、身体にたまっている「水」が少なくなれば、それに応じて尿の回数も減るので心配ないのです。よく効いているので、薬は継続すべきで、中止したら治る病気も治らなくなってしまいます。

きちんと説明しなかったこちらが悪いのですが、このような頻尿になるという予想がなかなか難しいのです。というのも、これだけの頻尿になることは珍しく、普通は尿の回数が一回くらい増える程度です。また、下手に説明すると、薬を飲むと頻尿になってしまうと思われ、薬を飲むのをためらってしまう人もいます。身体に「水」があまりたまってないと考えた場合(診たて違いですが)や、それほど「水」をさばく効果のない漢方薬を処方した場合(頻尿が起きる可能性を通常説明しませんから)、こういうときも頻尿となると、上記のような失敗となります。こういう頻尿は、私が嫌いな言葉ですが、いわゆる「好転反応」が起きているのです。

漢方治療していて、身体から出るものが増えるのは概してよい反応のことが多いです。例えば、便通や月経、鼻汁などでもおきることがあります。例えばいわゆる宿便がある場合、漢方薬が効くと、便通が頻回なることがあります。下剤が入った処方で便通が頻回になるのは必ずしもよい反応かどうかはわかりませんが、下剤が入っていない処方で便通が頻回になる場合は、たまっている便が出るのでよい反応です。仕事中などにもトイレに行かねばならなくなったりすることもあるので、頻尿と同じようにしばしば悪いことのように誤解され、下剤の入っていない処方にもかかわらず「下剤の入っていない薬にしてください」といわれることもあります。

上記のような場合、患者さんが再診してもらえれば、よくなる反応なのでそのまま薬を続けましょう、と説明できるのですが、自己判断で漢方薬が合わないと思い、再診せずそこで治療を中断される方もいらっしゃるのが残念です。

漢方で、身体から出るものが増えるのは、大概よいことが身体で起きていると思ってください。

田中医院