葛根湯は漢方薬の中では一番ポピュラーなものと思います。患者さんからも、しばしば葛根湯の処方を請われることが多いので、葛根湯について少しお話を。

葛根湯は1800年以上前に書かれた「傷寒論」という本に書かれた処方ですが、処方内容は1800年以上前から変わっていません。現代薬がさほど長い時間たたずに消えていくのとは対称的です。葛根湯を使うときに目標とする症候も、1800年以上前と変わっていないことも驚きです。専門的には「項背がこわばり、発熱、悪寒し身疼痛するもの」に使います。もう少しわかりやすく言うと「首から背中のあたりがこる感じがして、熱があり、寒気がして、身体の節々が痛い」時に使います。皆さんは「なんとなく寒くて、風引いたという感じ」のときに使われているのではないかと思いますが、それでもかまいません。ただ、先の使用目標を加えると、効果をもっと実感できると思います。

私の場合、風邪引いたなと思ったら、すぐ白湯で葛根湯を1包飲みます。これで良くなれば、それでおしまいですが、あまり効果が見られなければ、葛根湯以外の処方を考えます。場合によっては最低3-4時間くらい空けて、もう1包葛根湯を飲んでみることもあります。これで効かなければ、葛根湯はこの風邪にあっていないと考え、違う処方にします。葛根湯を風邪で使うときはたいてい1包です。場合によっては時間を空けて2包、3包と飲むこともありますが、あまり多くありません。葛根湯は風邪の初期に使う薬なので、風邪の初日、1包目が勝負なのです。一般方は、私のような使い方をしなくても良いのですが、葛根湯は風邪引いてから何日もたったら、効果はあまり期待できません。

風邪に使うなら、以上のように使えばあまりトラブルもないと思いますが、注意していただきたいのは、上記のような症状があっても、葛根湯を使わないほうが良い人がいるということです。葛根湯を飲むと動悸を起こす人や胃腸の調子が悪くなる(食欲低下、胃や腸が張る、下痢するなど)人です。そのほかにもありますが、内服すると何か不調が起きるなら、やめていただければ、それで問題ないと思います。胃腸の調子が悪くなる「副作用」は食後に飲むことで問題なくなることもあり、この場合、短期なら葛根湯を服用できると思います。食後に内服しても胃が悪くなる場合は、薬があっていないと思われますので、やめるほうが無難です。また内服すると動悸する人も同様です。

田中医院