漢方薬と西洋薬の違い
漢方薬と西洋薬の違いは、薬を丸ごと使うか、単一成分で使うかではないかと思います。西洋薬はできるだけ薬の純度を上げて単一成分として使うのが普通です。例えば抗生物質であるペニシリです。これはアオカビが菌の増殖を抑制していることに気がついたフレミングによってアオカビから分離され、得られたものです。カビのままでは使うことは難しいものが、アオカビからペニシリンを分離し、単一成分になって使えるようになったのです。単一成分のほうが薬の効果も強いし、その作用も単一成分であるため、予想したものになるはずです(副作用は別ですが)。西洋薬は基本的には単一物質であり、その作用も予想される範囲内のものです。
ところが漢方薬は丸ごと、そのままで使います。木や草などを根や種、葉などには分けることが多いですが、そこまでで、あとはそのまま乾燥などして使います。このため、単一成分というには程遠く、たくさんの物質が入ったものが薬となります。1つの生薬に数百種類の物質があるといわれます。したがって、入っている物質は非常に多く、その作用はそれに伴い複雑で、どんな効果が出るかは、ある程度は予想されるのですが、すべては投薬してみないとわからないというようなところがあります。単一成分の西洋薬では、予想範囲外の作用が起きるということは、副反応以外では考えにくいのとは、大きく違います。また、漢方では1つの生薬の中に、逆の作用をする物質が入っている可能性もあります。というのも、植物などの生体が生きていくには、逆の作用をする相反物質が必要なことが多いからです。どういうことかというと、例えば身体を動かすなどのため筋肉を収縮させるとします(植物には筋肉は無いですが、一例です)。すると筋肉が収縮して動きますが、さらに動かすには収縮しきった筋肉を逆に、弛緩させてから再び収縮させるということが必要になります。つまり、筋肉を使うには収縮させる物質と逆の作用である弛緩させる物質が必要で、それぞれを担う物質は相反した作用のものになるわけです。いろいろな生命活動には相反物質がしばしば必要なので、生きたものを丸ごと薬にして使うということは、相反物質がその中に存在していることが当然ともいえます。つまり丸ごと使う漢方薬に相反物質が入っているのは当然なわけです。
しかしそれでは漢方薬の作用は差し引きゼロで、効果は何もないのではと思われるかもしれません。不思議なことにそうはならないのはいろいろ理由があると思います・・・
予想以上に長い話になり、複雑になってしまいました。次回に続き書きます。とりあえず、漢方薬にはたくさんの物質が入っており、逆の作用があるものも存在していると理解してください。