西洋薬は1つの成分を薬としますが、漢方薬はたくさんの成分が入ったものを薬として使い、その中に作用が相反する成分も入っている、という前回の話の続きです。

漢方薬は、薬の効果が相反する成分が入っているにもかかわらず、効果が打ち消されずに認められる理由はいくつか考えられます。1つは相反する成分以外のものが薬効の中心になっており、相反する成分は、薬効に関係しないのために薬効が得られるというものです。2つ目は、相反する成分があっても等しい量ではないので、多いほうの薬効が出るため、薬効が得られるというものです。そのほかいろいろ考えられるのですが、実は正確なことはわかっていません(私が勝手に考えているだけです)。ただ、治療していて相反する薬の効果、たとえば元気を出す薬(補中益気湯など)で、元気が出るのではなく、眠くなってしまう、あるいは利尿薬なのに、尿が出るのではなく、尿の量が減るなど、逆の効果が生じるのは、相反する物質が存在しているために起こると考えるとわかりやすいです。こういうことが起きるのは、含まれている物質の量が少なくても、身体の方で必要とするものを取り入れようとすることで生ずるのだと私は思っています。

実際の例として、麻黄という生薬がありますが、その茎の部分を乾燥させて生薬として使います。風邪などにしばしば配合される生薬で(葛根湯などにも入っています)、発汗作用があります。麻黄の茎に節があるのですが、この部分には、なんと、逆の汗を止める作用、止汗作用があるのです。さらに根の部分にも止汗作用があります。生薬として使われる麻黄は根を使いませんが、茎についている節はそのままにして使われるので、漢方薬で使う麻黄には、発汗作用と止汗作用の入ったものを使っているわけです。しかし、実際に使うと汗が出て発汗しますが、汗が止まる、出ないということはありません。変な感じですが、反対の作用がある成分の入ったものを使っているのです。反対の作用の成分を取り除いたほうが良いのでは?と思われますが、漢方薬は逆の作用の成分が入っているのが味噌で、料理の隠し味のようなものではないかと私は考えています。逆の作用をする成分が入っているので薬の効果や副作用の面で良いのかもしれません。

このように、漢方薬にはたくさんの成分が入ったものが使われるため、思ってもみない作用が起きて予想外の効果が出ることがしばしばあるのです。西洋薬で予想外の作用というと、ほとんどが副作用というのとは違っています。

話はまだ途中ですが、内容が難しくなり、時間不足でまとめ切れそうに無いので、この辺でおしまいにします。気まぐれとその場の思いつきで書いているので、こんなことになりました。またそのうち続き書きます。ご容赦を。

田中医院