熱が出たときは冷やすほうが良いのですか、温めるほうがよいのですかと時々聞かれます。

現代医学では、体温のような客観的な指標を使って状態をまず判断し、どうするか決めます。つまり、体温計で体温を測り、患者が平熱より高い状態にあれば、平熱に戻すことを考えます。患者が寒がっていようが暑がっていようが関係なく、冷やすなどの方法で熱を下げるということになります。しかし最近では、発熱は闘病反応と考え、やたらと熱を下げることに否定的になりました。体温が上昇することにより新陳代謝が上がって免疫機能が高まり、またウイルス自体も高温環境のほうが活動しにくいので、生体防御に都合がよいということがわかってきたからです。高熱なら解熱を考えますが、少々の熱なら、解熱しないほうが良いという考え方になっています。

東洋医学ではどうかというと簡単です。寒気がするなど寒がるときは温め、暑いというときは冷やすのです。これは体温が何℃であろうと関係ありません。東洋医学では、患者を中心に考えるので、患者が寒く感じれば、「寒」であり、熱く感じていれば「熱」となります。体温が39℃あっても、寒く感じていれば「寒」で、治療は「温める」です(しかし、さすがに39℃あったらケースバイケースかもしれません)。つまり熱があったときどうするかの答えは、寒がるなら温める、暑がるなら冷やす、となります。昔は熱といえば冷していた現代医学より、東洋医学のほうが進んでいたのです。ただ、温めすぎと冷やしすぎには注意してください。心地よく感じる温度が適当です。

この寒がるときは温め、暑がるときは冷やすという考えは、いろいろ応用が利きます。たとえば、打ち身や捻挫、肩こりなどで湿布をする場合、冷たい湿布と暖かい湿布があり、どちらがよいか迷うことがあると思います。患部を温めて気持ちよければ、「寒」の状態ですから暖める湿布、冷たいほうが気持ちよければ、「熱」の状態ですから冷やす湿布にすればよいのです。他にもまだありそうですが、この考え方を利用してみてください。

田中医院