前回、「たまった水」を身体から出すのに、漢方では直接利尿をつけるのではなく、からだ全体の歪を治して利尿をつけ、例えば肝臓が悪ければ、肝臓の調子を改善して利尿をつけるということを書きました。この話では、現代薬でも肝臓の治療をすれば「たまった水」が出てきてよいのでは?何も漢方薬ではなく現代薬で治療すればよいのではという疑問が起きるかと思われるので、その続きです。

実はこれがうまくいかないのです。大きな理由としては、漢方で肝臓が悪いといっても、現代医学では検査しても、肝臓に異常が認められることはほとんどありません。以前書きましたが、これは漢方でいう肝臓と現代医学の肝臓が違うから起きることなのです。イライラがひどい、怒りっぽいなどの症状があると、漢方では肝臓の異常と考え、肝臓の治療を考えます。このような症状を現代医学では肝臓の症状と考えませんし、検査をしても異常は認められないでしょう。現代医学ではイライラや怒りっぽいなどは神経科の分野、あるいは病気とは考えないのが普通です。現代医学で肝臓に悪いところは無いということになるので、肝臓の改善⇒利尿をつけるという漢方のような治療はできないのです。これが現代医学では治療できない大きな理由です。利尿に限ったことではなく、便通がよくなったり、食欲が出てくるなども同じで、やはり改善してくればからだ全体の歪が正されてきたと判断でき、訴えとなっている症状が改善していなくても治療はうまくいっていると考えます。このため(身体の歪みを発見するため)、漢方は全身のいろいろな症状を聞く必要があり、いろいろ細かいことを聞くのです。またその改善を見極めるのに訴えとなっている症状とは全く関係ないような尿の回数が増えた、便通がよくなったなどの症状を重視します。さりげなく聞いていますが、こちらにとって重要な情報のことがしばしばなのです。

田中医院