口に入るものに悪しきものなし
糖尿病、高コレステロール血証、貧血などいろいろ病気を持つ人が、食べるものに気をつけようと思うが、病気がたくさんあるので何を食べたらよいかわからないと言って困っていました。貧血のためにレバーを食べればコレステロールに良くないし・・・などなど。これを聞いて、以前、矢数道明先生(昭和の漢方の大家です)がおっしゃっていたことを思い出しました。矢数先生も食事は健康に大事だと考え、若い頃、食養についていろいろ勉強されたそうです。そうしているうちに、あれもダメ、これもダメ、あれはこっちによいがあっちにはダメとなり、何を食べてよいのかわからなくなってしまい、どうしたらよいかわからなくなってしまったそうです。そこで宗教家に、確か牧師さんとおっしゃっていたと思います、どうしたらよいか尋ねたそうです。そうしたら牧師さんは「口に入るものに悪しき物なし、口より出ずる物に悪しき物あり」といわれ、諭されたそうです。つまり、「口に美味しく入るものに悪いものはない、頭であれこれ考えてこれは身体に悪いものだということが悪いものなのだ」というような意味です。これを矢数先生は聞いて頭で考えて良い悪いを判断していたのは間違いだと悟り、悩みは解消したそうです。食べ物自体に悪いものはなく、悪いものだと判断する人間が悪いのです。例えば、甘いものは良くないといいますが、良い面もあります。すばやくエネルギーの補充できる、緊張を緩めるなどの好い作用も持っているのです。こういうことを無視して、一方的に悪いものと決めつけてしまうと、食べるものはなくなってしまうということです。
ただ、この話を聞いて誤解しないでいただきたいのですが、甘いものが美味しいので食べ過ぎても「口に美味しく入るのだから悪いものではない」ということではありません。食べるもののバランスが大事で、食べるもの全般に偏って食べてはいけないということです。