夏になると下痢を訴える人が多くなります。先日も別の病気で通院している方が、最近下痢を毎日してしまうというのです。それほど胃腸が弱い人ではないので不思議に思い、よく話を聞いてみると、この時期に多い下痢とわかりました。どういう下痢かというと、下痢をしていても食欲はほとんど落ちないし、下痢で身体がだるくなるというようなこともなく、下痢も続くわけではありません。1日1回、多くても2回、下痢をしてもその後は問題ないというものです。こういう下痢は取りすぎた水分を身体から出そうとして起きる下痢なので、さほど積極的に止める必要のない下痢です。水分摂取を控えるだけで治ることもありますが、通常は身体の余分な水をさばくような処方でよくなります。下痢を止めるというような処方は必要ないのです。ただ注意することは、下痢をしたので、脱水を心配して患者さんが水分を取ってしまうことです。これではせっかく出た余分な水をまたもどしてしまうことになってしまいます。

この時期に多い下痢と書きましたが、この時期にはもう1つ違うタイプの下痢も多いです。どちらかというと、この下痢のほうが「正統派」の下痢です。夏になって水分取りすぎて、胃腸を疲れさせてしまい、消化力が低下して起きる下痢です。夏バテといってもいいかもしれません。この下痢は食欲は落ちますし、体はだるくなり、下痢からの回復も悪く、回数も多くなりがちになります。この下痢は治療しないとさらにひどくなってしまいますので、体力を回復させながら、お腹の調子を整えていくというような処方で対応します。

食中毒のようなものをのぞいて、以上の2つのタイプの下痢が夏の時期は多くなります。しかし、現代医学では両者の下痢に区別はなく、どちらの下痢でも治療は整腸剤や下痢止めなどを処方しておしまいです。漢方のきめ細かな治療とは大違いです。

もっとも現代医学の場合、水が余って起きる下痢、あるいは夏バテで起きる下痢ということがわかっても、治療薬はほとんど変わらないと思います。なぜなら、それに対応した薬がないからです。身体の余分な水を出す薬(まさか利尿剤は効かないと思います)し、バテを治す薬などせいぜいビタミン剤で、たいしたものはありません。したがって、処方は前記のようにしかならないのです・・・

書き始めた時は、水分控えましょうというような話を書くつもりだったのですが、今回書く時間がなく頭が混乱し、書いていくうちに漢方の宣伝みたいな話になってしまいました。夏バテと夏ボケのようです。

田中医院