前回、辛いものを好きではない人は「本物」の冷え症ではない、と書きましたが、「冷え症に本物と偽物があるのか?」と聞かれたので書いておきます。

実は、冷え症に本物も偽物もないと思っているので書き方が悪かったのです。ただ私の頭の中では、冷え症に「本物」と「偽物」の2種類あります。「本物」というのは身体を温める力が弱いため、冷えてしまう人のことです。例えて言うならば、お湯を沸かすのに火力が弱くてお湯が沸かない人です。温めようとしても火が弱くて温まらないのです。高齢になるとこの傾向は誰でも出てきます。治療は火力を強くしてやること(身体を温める力を強化する)なので、漢方薬では乾姜(生姜を蒸したもの)などが入った温める処方などが思い浮かびます。食べるものも身体が温まるもの、トウガラシや生姜、ニンニク、フェンネル、クローブなどのスパイス類を多く取ることです。

「偽物」というのは温める力はさほど弱くはないにもかかわらず、冷えるという人です。いくつかパターンがありますが、一番多いのが、身体に水を多く溜め込んでいるため、身体が温まらない人です。これも例えると、大きなヤカンに水がいっぱい入っていて、お湯が沸かないという状態です。火力はある程度あるのですが、ヤカンに入っている水が多すぎて温まらないということです。つまり、火力はあるのに冷えるので「本物ではない冷え症」というわけです。この場合はヤカンの水を減らしてやれば、お湯は沸きます。したがって治療は、火力を強くするような処方ではなく、身体から余分な水を出してやるような処方で冷え症は改善します。水がたまっている場合は水を身体から出す処方です。五苓散が有名ですが、その他にも処方はたくさんあります。食べるもので注意することは水分、果物を控えること、好きならば辛いものをとって、身体の水を追い出すというのもありです。

田中医院