今年は5月頃より、診察に来院される方が「身体がだるい」と訴えられることが非常に多かったです。気候の不順などで自律神経の調子が狂ったためと思います。この「だるい」という言葉を何回も何回も何回も聴いているうちに補中益気湯という漢方薬について少し書こうと思いました。

この補中益気湯は、中国で金・元の時代(12~14世紀頃)に作られた処方で、医王湯とも言われ、漢方薬の王様というような名前がついています。実際、その効果を実感すると、医王湯という銘銘に納得がいきます。私も漢方薬を使い始めた頃、自分で飲んでみてその効果に驚きました。その時は、仕事が忙しく、寝不足が続き、だるいし、食欲もなくなっていました。休めばいいのですが、時間がなくどうしようもありませんでした。漢方薬を学んでいるのだから漢方薬でなんとかしてみようと思いました。そこで考えついたのが補中益気湯でした。自分の漢方治療の腕と漢方の効果を試すよいチャンスです。補中益気湯を煎じて飲んでみました。すると飲んでから5分もしないうちにお腹がすき、食べるのが面倒と思っていたのに、食事に行こうと思いました。その途中、だるくて動かすのも嫌だった手足が普通になっていることに気がつきました。だるくないのです。だるさはなくなり、食欲も出て、その効果のすばらしさに驚きました。

補中益気湯はだるさだけではなく、これからの夏バテにも威力を発揮します。どういうときに使うかは、津田玄仙という江戸時代の人が示した使用目標が簡単で有名です。それを普通の人に多少わかりやすく書くと、以下のようになります。

  • 手足がだるい、身体がだるく動くのが面倒
  • 話す言葉に力がない、声を出すのが疲れるし、面倒
  • 目に力がない、物をじっと見るのが面倒
  • 口中に白抹が生ずる、口の中がさっぱりしない
  • 食欲がない、食べ物を美味しく感じない、食事の時間だから食べる
  • 熱い飲食を好む
  • お腹に動悸を感ずる

などで、このうち1-2つ症状があれば効果があるといわれています。薬局でも売っている薬ですから疲れたとき飲んでみると面白いです。注意して欲しいのは上記の状態にもかかわらず補中益気湯の効果を感じられないときです。このときはかなりひどい状態と思われますので、休まなければダメです。

蛇足です。薬局で売っている漢方薬は有効なエキスの量が医療用の半分なので効果はいまいちだと思います。医療用の漢方薬でも煎じに比べるといまいちで、本当の効果を実感するには煎じ薬が一番です。

田中医院