新型コロナウイルス、まだまだ落ち着きそうもなく、世界的に大変なことになっています。それほど恐れることもない感染症ですが、拡大しないように注意するのは重要ですし、罹患しないにこしたことはありません。インフルエンザのときにも少し書きましたが、予防には外出から帰ったら手洗いをすることなどと、免疫力をあげるのがよいのです。そこで免疫力を上げるのに漢方薬が適しているという話しをします。

昔は病気といえば、細菌などの感染症がほとんどで、その治療が重要なことでした。1800年ほど前に書かれた『傷寒論』という本がありますが、この本は急性の熱性疾患の治療法が書かれた本で、つまり感染症の治療本ともいえるものです。病気のさまざまな状態、変化に対応し、いかなる薬を処方するかが書かれています。日本の漢方ではバイブルのように言われ、現在の保険収載の漢方処方にかなりの数があります。抗生物質のなかった昔では、身体の抵抗力、免疫力あげることが感染症の治療となるので、自然と漢方薬は免疫力を上げる薬となっているのです。

現代科学の思考回路では、なんという漢方薬が一番免疫力を上げ、いかにそれを使うか、という風になってしまいますが、その考え方は東洋医学には適しません。人によって適している薬は違うからです。つまりその人の体質に合った薬でなければ思うように免疫力は上がらないのです。免疫力が上がることが実験的に示された漢方薬でも、体質に合わないと副作用などが前面に出てしまい、身体全体の調子が崩れてしまいます。すると免疫力は落ちてしまい、実験で示されたほどの効果は出なくなってしまうのです。身体全体の調子が上がらなければダメなのです。体質にあった漢方薬というのは飲んでいると体調がよく、睡眠、食欲、便通など良好になる薬です。免疫力を上げるのに関係ないのでは?と思えるような処方、たとえば月経痛や蓄膿症、頭痛、食欲不振などでも体質に合っていれば免疫力は上がります。要するに処方されている漢方薬を飲んでいれば大丈夫です。

但し寝不足、過労には気をつけてください。私はこれで失敗してインフルエンザにかかってしまったことがあります。

田中医院