漢方薬のルーツ
食欲の秋なので、漢方薬は料理が原点かな?というお話を。
エキス顆粒の漢方薬が多く使われていますが、漢方薬というのは本来、生薬を煎じるものです。古い本ではその煎じ方が現代の方法と少々異なっています。例えば葛根湯です。これは2000年ほど前に記載された『傷寒論』という本に載っており、生薬が7種類入っています。その煎じ方は、まず麻黄と葛根という2つの生薬を入れて煎じます。煮立てていると「白沫」がでるのでこれを取り去り、それから残りの5つの生薬を入れてまた煎じるのです。現在ではこんなことめんどうなことをせず、7種類の生薬をいっぺんにまとめて煎じています。この「白沫を取り去る」というのは、現代のわれわれが鍋物などを食べるときの「アクとり」と同じことをしているように思え、漢方薬が料理であった名残りに感じます。
また、漢方薬で使われる生薬も、調味料といえる生姜、大棗(ナツメ)、桂枝(シナモン)を使う頻度は高く、多くの漢方薬に入っています。当初は味の調和をとるために入れられたのではないかと思ってしまいます。お酒や酢で煎じるという漢方薬もあり、これも漢方薬が料理から発展してきたのではないかと思わせます。煎じ薬というのは「薬」かもしれませんが、どちらかというと、野菜スープ(動物や鉱物も使うこともありますが)ではないかという感じを持つのは私だけでしょうか?
「白沫を取り去って」作られた葛根湯と、取り去らないで煎じられた葛根湯に違いはあるかというと、味は違います。実際に私は作って飲んでみたのですが、あく抜きともいえる白沫を取り除いたほうが飲みやすく、味を追求している気がします。しかし、薬効は変わらないようで、手間がかかるので現在では、あく抜きをして煎じることを勧めているところは多分ないと思います。エキス顆粒の漢方薬も7種まとめて煎じて作られています。
『周礼』という古代中国の古い本がありますが、これに食事治療専門医の「食医」というものがいたという記載があります。どのような治療をしたか詳しいことは記録がないのでわからないのですが、食べ物で病気を治療したようです。これが発展して今の漢方薬ができたのではないかといわれています。その名残りが、「白沫を去る」や「酒や酢で煎じる」などに残っているように思もわれ、漢方薬のルーツは料理だと思っています。