暑くなってきたので、水分取りましょうコールが始まりました。それを支持するような最近のアメリカでの研究がありました。喉は渇いていなくても、胃の中の水分量が少ないと、男性自転車競技選手のペダルをこぐ力などが低下する、渇いていなくても水分を取ったほうが運動能力が向上するというものです。どう思いますか?
こういう研究は批判にさらされて、正しいものだけが残っていくので、信頼できるものかどうかは、まだなんともいえません。しかし、スポーツ界にはインパクトのある研究と思います。この研究に従えば、運動選手は絶えず水分を取っているほうが運動能力が低下しなくて良いわけです。水分を余分に取ってもさほど問題がおきるとは思われませんので、この研究を知った運動選手はとりあえず水分を取っておこうということになるのではないかと思います。すると私たちはスポーツ観戦をすると、選手たちが絶えずといえるほど水分補給をする姿を目にするわけです。
 ここまでは問題ないのですが、これが拡大解釈されていくのが心配です。スポーツ界で渇く前に水分を取るほうが良いというのが一般的になると、一般の人も渇く前に水分を取るほうがよいというのが広まり、喉が渇く前に水分を取りましょうになってしまうことです。この研究は、渇く前に水分を取った方が運動能力が高まるといっているだけで、渇く前に水分を取っているほうが熱中症にならない、あるいは仕事能力が高まるというようなことを示した研究ではないのです。にもかかわらず、渇く前に水分を取りましょう、熱中症を予防できるし、身体にもよいなどという誤った解釈が幅を利かせてくる気がします。この研究では水分取りすぎて食欲を落とすなどの胃腸への影響については考慮されていませんし、熱中症が予防できるという研究でもありません。運動能力についての研究です。
 クーラーの効いたオフィスで一般人が水分を過剰に取ってよいことなどありません。食欲は落とすし、身体は冷えるし害が多いので、一般の人は特別な事情がない限り、水分を過剰にとるのは控えましょう。

田中医院