葛根湯の使い方(2)
葛根湯についてもう少し続きを書きます。
葛根湯は風邪以外にもさまざまな病気に使われています。漢方の古典に「首から背中のあたりがこる感じがして、熱があり、寒気がして、身体の節々が痛い」時に葛根湯を使うとよいと書かれているのですが、これを応用してさまざまな疾患に使っているのです。例えば肩こりですが、「背中のあたりがこる感じが」を肩こりに読み替えて応用しているのです。
乳腺炎に葛根湯は使われ、よく効くので、母乳で子供を育てたことのある方ならご存知ではないかと思います。これも古典の記載の応用です。「首から背中のあたりがこる感じ」は乳腺炎を起こすとおきる症状です。さらに、ここに素人の人にはわかりにくいので書きませんでしたが、「汗が出ない」という使用目標もあるのです。葛根湯を飲むと汗が出て楽になるということですが、この「汗がでない」を「母乳が出ない」に読み替えて使うのです!?不思議なことに、葛根湯を飲むと胸の張りが楽になり母乳が出るのです。
この話しを医学生のときに最初に聞いたのですが、漢方のクラブで顧問をされていた石原先生からでした。そのとき「漢方ってなんかウサン臭いものだなあ」と思った記憶があります。皆さんもそう思われるのではないかと思いますが、ところが実際に乳腺炎に葛根湯を使ってみると、よく効きます。漢方の理論がウサン臭くても、効果があるのは事実なので、ウサン臭さは考えないことにして、効果は本物と理解し、学生の時は過ごした覚えがあります。
蛇足です。1800年以上前に書かれた本「傷寒論」での葛根湯の作り方は、実は現在と違っています。現在では7種類の生薬をいっしょに水に入れ、煎じて作りますが、「傷寒論」では、「麻黄」という生薬と「葛根」という生薬を先に水に入れて煎じ、そのとき出る「抹を去り」(これはナベ料理などでやる「アク取り」をするのと同じです)、それから残りの生薬を入れて煎じる、と書いてあるのです。実際にこれをやってみたことがありますが、アクを取るためか葛根湯が飲みやすくなります。胃への負担も減るのかとも思います。しかし、これは手間がかかるため、残念なことに、現在は無視されて行われてはいません。こうすると、胃腸などの副作用は減ると思うのですが。