(続)水逆
前回の続きです。水逆の治療からいくつか学んだという話です。
「五苓散は生薬を煎じるよりも生薬を粉末にした方が効果が高い」と明治時代の漢方の大家、浅田宗伯が本に書いてますが、そのとおりだと知りました。前回の話には書いていませんが、実は生薬の粉末の五苓散を投薬する前に、五苓散のエキス顆粒製剤(本当の意味の煎じ薬ではありませんが煎じてフリーズドライにしたもの)を飲ませたのです。結果は失敗で吐いてしまいました。このとき思いだしたのが前述の粉末のほうが効くという話でした。そこで娘なので実験台にして(ひどい父親です)粉末の五苓散を飲ませたのです。このときは飲ませ方も考えて、メープルシロップに混ぜて少しずつ舐めさせて飲ませました(粉末と煎じの正確な比較にはなりませんが)。それが効果を示して、娘は治癒したのです。この経験が影響して当医院では五苓散を処方するとき、メーカーのエキス顆粒ではなく、薬局で生薬を粉末にしてもらい、それをを処方するようにしています。
また、漢方薬の即効性についても学びました。風邪などでも漢方薬は即効性があるとはわかっていましたが、状態が悪いにもかかわらず、五苓散を飲ましたら、注射をした時のような即効性には驚き、ケースによっては本当に早く効くことを知りました。
それにひきかえ、私の処方が悪かったのかもしれませんが、現代薬の効かない事にも驚きました。疾患にもよりますが、漢方薬は現代薬よりも効果が勝ることがしばしばあるので、積極的に使うべきだとこの時感じました。
娘が五苓散をほんの少し口に入れただけで水逆が治ったのは驚きましたが、漢方薬の投薬量というのはケースによっては少なくてもいいことも知りました。もとより漢方薬の使用量というのは経験的なもので、あまり科学的ではないのです。たとえば、日本と中国では生薬の使用量がかなり違い、日本は中国の半分以下の量で使用していますが、効果に問題ありません。漢方の場合、昔からの経験も疑ったほうがいいこともあると知りました。
この水逆の治療の経験は現在の私に大きく影響しています。