水逆
「水逆」(すいぎゃく)という言葉知っていますか?漢方の用語で「のどが渇くので水を飲むが、気持ち悪くなってすぐ吐いてしまう」という状態をいいます。子供の急性胃炎のときなどにみられることがあります。
漢方治療を覚え始めた頃、「水逆」に漢方薬を与えて劇的に効き、漢方薬の効果に驚いたことがあります。3歳の女の子でした。朝から機嫌が悪く、食欲もなく、朝食を食べたところ吐いてしまいました。軽度ですが下痢もして、発熱37~38℃、昼食も食べられません。のどが渇くというので、水を飲ませるとすぐ吐いてしまいます。そのたびに苦しがって泣きます。現代薬の吐き気止めや胃薬を飲ませましたが、改善しません。夜になっても少しもよくならなかったので、漢方薬で治療しました。状況から「水逆」と診断し、五苓散という漢方薬を与えました。五苓散は生薬の粉末を使い、製薬会社のエキス顆粒ではありませんせした。生薬の粉末なので美味しくありません。また水で飲ませると吐いてしまうことを考えて、メープルシロップに混ぜて、五苓散をなめさせました。すると、驚いたことに、与えようと思った量の半分も飲まないうちに機嫌が直り、スヤスヤと寝てしまったのです。なめさせてから5分もたっていないと思います。翌日には熱も下がっており、食欲も普通で、病気は治っていました。この効果には驚きました。この即効性と効果のすばらしさに、漢方薬はすごいのだと新たに思った記憶があります。実はこのときはまだ漢方の腕は未熟で自信がなかったので、最初は現代薬で治療したのです。しかし、結果は上述のとおり、あまり効果はありませんでした。そこで漢方薬で何か良い薬はないか調べていくうちに、「水逆」を見つけ、五苓散を処方したのですが、その効果のすばらしさに本当に驚きました。
読んでいれば気がつかれるのではないかと思うのですが、私の娘が3歳の夏のときの話で、夏に子供の胃腸炎を見ると思い出します。