好転反応
先日、漢方薬飲んで調子悪くなった患者さんに「調子が悪いのは好転反応でしょうか」と聞かれギョッとしました。私はこの「好転反応」という言葉は大嫌いなので、驚いてしまったのです。というのも、「好転反応」という言葉は、漢方薬を投薬して悪化したとき、その悪化をごまかすためしばしば使われる言葉と思っているからです。
好転反応というのは、「一時的に悪化するが、これから良くなる兆候」というような意味で使われています。東洋医学の世界でも西洋医学の世界でも普通使われる言葉ではありません。ただ漢方ではこれに似た言葉として、瞑眩(めんげん)というのがあります。治療により一時的に病状が悪化後、速やかに病気が治ることを言います。瞑眩はめったに起きるものではなく、特にエキス製剤では、ほとんど起きるものではないと私は思っています。したがって瞑眩という言葉を使う機会はめったにありません。ところが好転反応という言葉はやたらと使われています。ちょっとした変化、たとえば眠くなる、食欲が出るなどの変化も好転反応であり、病状が悪化したときにも、改善を期待して使われます。瞑眩と比べると、好転反応はちょっとした軽い変化にも使われています。
瞑眩という漢方用語を誰かがわかりやすく、使いやすくするため「好転反応」という言葉が発明されたのではないかと思っています。そして言葉が独り歩きして、ちょっとした軽い病状の変化も好転反応というようになったのでは?と思います。私が漢方を始めた頃には聞いたことのない言葉でしたが、漢方治療していて病気が悪化したとき、ごまかすのに都合のよい言葉でもあるので、使用が広まった気がします。
漢方薬を飲んでいて、主たる病気とは関係ない症状、たとえば尿量が増えた、薬を飲むと眠くなるなどの症状は漢方薬が効いている兆候で、好転反応といっていいものですが、私の知っている限りでは矢数道明先生や大塚恭男先生などの漢方の大家が、このような時に好転反応という言葉を使ったのを聞いたことがありません。それゆえ私も使う気が起きない言葉です。