「これ、おいしいね、五臓六腑にしみわたるね」というときの「五臓六腑」は全身の臓器を示す東洋医学から来た言葉ですが、五臓とは何を指すか、六腑とは何を指すか知っていますか。
 五臓は肝臓、心臓、肺、腎臓と4つ答えられる方も多いのではないかと思いますが、最後の1つが少し難しいです。「○臓」という臓器を考えると、膵臓と脾臓というのが候補に浮かびますが(二つ知っていれば医学に詳しいです)、正解は脾臓です。脾臓という名前は聞いたことがあるかもしれませんが、どこにあるのか知らない人が多いのではないかと思います。上腹部の左のほうにあり、左の腎臓と接している臓器です。ただし、以前にも書いたことですが、東洋医学でいう「脾臓」は現代医学でいう脾臓とは違ったもので、働きは一致しません。
 六腑は難しいです。胃、小腸、大腸、膀胱、胆嚢と5つ出てくればなかなかのものですが、残りの1つの難易度が非常に高いです。というのも、東洋医学を学んだことがなければ知らない臓器で、現代医学ではないものだからです。それは「三焦」(さんしょう)というものです。初耳と思います。そんなものが身体にあったのかと思われるでしょう。東洋医学でも、三焦が今の臓器の何に当たるか諸説があり、よくわかっていません。「リンパ管」、「腸管膜」、「膵臓」、「働きだけあって実体のないもの」、「間質」などが候補に上がっていますが、確定できていません。どれにしても普通の人にはわかりにくいものばかりです。東洋医学は臓器がどこにあるかわからなくていいのか、といわれそうですが、現代医学は解剖を基礎にできているので、どの臓器がどこにあり、それがどのような働きをするかなどは重要です。ところが東洋医学は理論ができているところに臓器を当てはめているだけなので、実際の働きと臓器が一致しなくてもかまわないのです。

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