(続)プラシーボ効果
前回、プラシーボ効果についてお話しましたが、今回はその逆のノセボ効果についてです。ノセボ効果というのは、プラシーボ効果の逆とも言えるもので、薬効のない偽薬で有害作用が現れることをいいます。たとえば小麦粉を薬のように思わせ、これは副作用に頭痛がありますといってのませます。そして頭痛が起きたら、ノセボ効果があったというのです。
そこで問題です。薬局などで薬の副作用の説明を受けた場合と、受けない場合とでは副作用の発現に差があると思いますか?副作用の発現に差があるとしたら、説明を受けた場合に多いのでしょうか?受けない場合でしょうか?
良いことか悪いことかわかりませんが、薬の説明を受けた方が副作用の発現が増えるのです。副作用を説明されると、その副作用を起こすのではないかという不安感からノセボ効果が起きるからではないかといわれています。人間は自分で考えているよりもはるかに心の影響を受けやすいのです。
漢方薬の副作用も説明が増えてからから、副作用を訴える患者さんが多くなりました。しかし、漢方薬は草の根や木の実、種などからなり、食べ物とあまりかわらないものです。食べ物でもソバアレルギーのような「副作用」があるように、漢方にもある程度の副作用はありますが、めったにあるものではありません。
ところが、今日もありました。漢方薬飲んでから足がつるようになり、近くの医院に行きました。「漢方薬のためでは?」といわれ、漢方の内服を減らしたのです。すると、足がつるのが少なくなったそうです。経過などから、漢方薬のため足がつったとは考えられませんが、この方に、漢方薬を普通に内服してもらうのは難しくなります。ノセボ効果が起きて、漢方薬を多く飲むと足がつるようになっているかもしれないからです。患者さんが悪いわけではないのですが、こうなると手の施しようがなくなります。処方した漢方薬が使えなくなってしまうのが困るのです。不安感を持ちながら薬を飲んでもあまり効かないのです。
こうならないよう最初の処方には細心の注意を払っていますが、起きてしまうのがノセボ効果で、これにいつも困らされています。