受験シーズンなので、眠気覚ましの漢方薬について書きます。漢方薬で眠気を覚ます薬があるのかというと、本来の使われ方ではないのですが、あります。それは意外かもしれませんが、風邪薬で有名な葛根湯です。現代薬の風邪薬というのは眠くなることが多いので大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、葛根湯には眠くならず逆に目を覚ます作用があるのです。漢方の大家、大塚敬節先生も使われていたようです。
 なぜ眠気に効くかというと、現代医学的にある程度説明ができます。葛根湯の構成生薬に麻黄(まおう)という生薬があり、この中にエフェドリンという物質が含まれています。これは咳など止める作用のある物質ですが、目を覚ます作用もあるのです。実は覚せい剤、メタンフェタミン(その昔疲労がポンととれるので「ヒロポン」といわれていました)はこのエフェドリンから作ることができるのです。つまり麻黄のエフェドリンは覚せい剤のメタンフェタミンと構造が似ているので合成することができるのですが、構造が似ているので似た作用を持つのです。そのため覚せい剤の持つ覚せい作用が多少あり、目を覚ますことができるのです。ただ覚せい剤に似ているといっても危険な薬ではないので心配はいりません。
 勉強をしていると、目を使うためか首筋が張ってきます。この首筋の張りにも葛根湯は効果を示すので、他の麻黄が入った漢方薬を飲むより効果が良く目が覚めます。ただし、葛根湯は胃腸が丈夫ではない人が飲むと、胃腸の調子を悪くすることがあるので注意が必要です。胃腸が弱くない人でも空腹で飲むと、やはり胃腸を悪くすることがあります。お腹に何も入っていないで飲んだ方が効果はあるのですが、連用するときは胃腸障害に気をつけてください。また煎じ薬と比べると顆粒の薬では薬効は落ちますが、煎じ薬でも質の悪い麻黄が使われていると効果は落ちます。

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